セイカツノオト
テレビを視なくなった。
平日朝、仕事に出る前にニュース番組を流しているくらいだ。
年齢だろうか?
時代のせい?
ネットやスマホの台頭?
いやいや、全然使い熟せていないし。
子供の頃はかなりのテレビっ子だった。
大好きな番組がヤマのようにあった。
いろんな番組の内容や背景、セリフやシーン、俳優やタレント、ナレーター、司会者、声優、タイトルバック、テーマ曲やサントラの作曲者編曲者、制作会社.......
事細かに憶えていた。
ビデオの無かった時代から。
それほどまでにひとつひとつに集中して視ていた。
好きだった。
オトナになってからもハマる番組はいくらかあった。
でも最近、オモシロいと思う番組がなくなった。
年齢だろうか?
時代のせい?
視ないから余計か。
つい1年くらい前まで、食事をする時、テレビが点いてないと全くダメだった。
なんか寂しい気がして我慢できなかった。
でも今は、オモシロくなくなって、ただダラダラと点けているのも何だかしんどくなって、
ほとんど点けていない。
家族もそれに異を唱えていない。
でもそうすると、
いろんな音が聞こえてくる。
配膳の音。
皿に箸が当たる音。
食べる音。
茶碗を置く音。
湯呑みにお茶を入れる音。
イスを引く音。
話す声。
ポットにお湯が沸く音。
とりとめもない家族の話。
掛け時計の音。
よく映画館なんかで映画を観ると、効果音ではない普通の生活音や雑踏の音などがクローズアップされて聞こえてくる。
もちろん演出の場合もある。
観終わって映画館を出た後、現実の雑踏の音が同じようにクローズアップされて聞こえてきて、まるで自分が映画のなかにいるような錯覚に陥いる。
いい映画だったりした後は特にそれが心地良かったりする。
それとは少し違うのかもしれないけれど、
でも、普段の生活のなかや仕事の往き帰り、耳を澄まして意識すると、いろんな音が聞こえてくる。
生まれてからずっとテレビと一緒に過ごしてきた世代の者として、
ここに来て、今ようやく、テレビを消すと、
いろんなモノが聞こえてくる。
見えてくる。