ツキカラノシシャ
土曜の朝、
まだ重い身体を無理矢理引きずり起こして布団から出ると、そいつは既に窓の外からこちらを覗き込んでいる。
昨日の夜には確かにいなかった。
でも昼過ぎには、いつのまにか居間に入り込んできていて、暗い壁の隅でじっと様子を伺っている。
和室や二階に移動しようとも部屋の戸を開けると、先回りしてうずくまっていて、次には上目遣いでこちらを見てくる。
夜になる頃には一転、夕食をとっている傍らで、まるで家族の一員かのようにくつろぎはじめるという始末だ。
結局その日は、そいつと一緒に眠ることになる。
そうやっていつもの様に、決して心地良くはないその鬱陶しい空気を感じながら、休日の初日は始まり、そして呆気なく終わる。
翌朝、
目が覚めても、やっぱりそいつは枕元にいる。
さらに重くなっている身体で今度は這う様に布団を出る。
仕方なく、これはきっと夢の続きなんだと自分に言い聞かせ、遅い朝食と共に二日目のダラけた休日を過ごし始める。
だがヤツは、その存在をますますエスカレートさせてくる。
気晴らしに外出しても気づくとすぐ隣にいて、振り払おうものなら逆にまとわりつき、
気を抜けば、突然目の前に躍り出て、その忌まわしい表情でこちらを嘲笑うのだった。
そしてその日の夜、
いよいよその正体はその本性のすべてを現し、ヒトの足元を見て脅しにかかってくる。
何ら抵抗する術を持たず無力で屈する事しかできないオレは、深い溜息とともにこう呟く他はない。
まったくもって嫌なヤツだ。
ほぼ毎週、忍びよってきては思い悩ませるそいつは、ウイークデーという名の監獄にオレを閉じ込めるため遣わされた使者だ。
日曜夜の時計の針が午前零時を指すと同時に、不敵な笑みを浮かべながらまたいつものようにそのくちびるが動く。
「お帰り...」
そいつの名は...
月曜日..
..........
m(_ _)m